おろか者よ。
「つまり、大ヘーゲルの云う処の、アウフハーベンですか?」
「名を付けようとするな。
ヒトの悪い癖だ。
すでに失った、悟性で感じ取れ。
おろか者よ。」
「おお! そう言って下さるのか。
私は、 おろかな者だ。それを、誇りに今まで生きて来た。
そうだ。私のおろかさこそ、私が人で在ると名乗る、
私の最後の、・・・僅かに残った尊厳だ。」
「はっはっは。(手を打って笑う)フムフム、。面白い男だ。
賢さと愚かさとが、同じものだという事だけは理解したようだな。」
「そうですね。賢さと愚かさとが、同義語なのと同じく
誠実と不誠実とが、同一物なのは理解できます。」
少し、間をおいて、
「あなたは先ほど、0と無限は同じものであり、全ては繋がっているとおっしゃった。
では、私とあなたとも繋がっているのか?」
「あたりまえだ。」
「ならば、さらに伺おう。
あなたが私を統括するように、
私もあなたを統括できるのか?」
「あたりまえだろう。
私もおまえも全ての中の、一部分でしかない。
関連を無視した分割は、無意味だ。
終わりが無いのは、 始まりが無いからだ。
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